甲状腺について
甲状腺とは
甲状腺は、みなさまが生きていくうえで重要なホルモンを作り、分泌する臓器です。
甲状腺ホルモンは代謝を調節するホルモンで異常による病気は、全身にさまざまな症状が出現し、どこが悪いのかなかなか判断できず 「どこか調子が悪い状態」が続きます。
周囲の方からすると、気のせい、バイオリズムの関係など、理解を得ることが難しく、誤解されている場合も少なからずあります。
甲状腺の病気は、20代~50代の女性に多い病気ですが、糖尿病の次に多い内分泌疾患で、男性の発症も少なくありません。
バセドウ病や橋本病が、最も有名な疾患で甲状腺自己抗体が原因の自己免疫疾患のひとつです。一般的に、自己免疫疾患は女性に多い事が知られています。
また、甲状腺は腫瘍ができやすい臓器です。良性の腫瘍が多いですが、まれに癌があることもあります。
甲状腺機能亢進症で現れる症状
甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)または甲状腺中毒症(こうじょうせんちゅうどくしょう)は、血液中の甲状腺ホルモンが増えた状態です。からだ全身の代謝が必要以上に高くなり、以下のような様々な症状になります。
こんな症状でお困りの方に
ドキドキする、暑い、汗が多くなる、手足の震え、イライラする、体重の減少、軟便、希少月経など
その他、だるい(疲れて)、疲れやすい、足がむくむ
代表的な疾患
・バセドウ病
・無痛性甲状腺炎
・亜急性甲状腺炎
・甲状腺機能性結節
甲状腺機能低下症で現れる症状
甲状腺機能低下症は、血液中の甲状腺ホルモンが少なくなった状態で、全身の代謝が低くなり以下のような症状になります。
こんな症状でお困りの方に
脈が遅い、寒い、皮膚がカサカサする、言葉や動作が遅くなる、眠い、物忘れが多い、体重の増加、便秘、過多月経
その他、だるい(やる気が出なく)、疲れやすい、足がむくむ、髪の毛が抜けるなど
代表的な疾患
・慢性甲状腺炎(橋本病)
・下垂体機能低下症
勘違いされやすい甲状腺の病気
・多様な症状・・・「自律神経失調症」や「更年期障害者」
・だるさや無気力・・・「うつ病」
・動悸、息切れ・・・「心臓病」
・体重減少・・・「癌」
・むくみ・・・「腎臓病」
・肝障害・・・「肝臓病」
・かゆみ・・・「蕁麻疹」
・高血糖・・・「糖尿病」
・物忘れ、眠さ・・・「認知症」
甲状腺に関するご質問
- Q.バセドウ病はなぜ目が出るのですか?
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バセドウ病の原因となる自己抗体により外眼筋や眼窩脂肪に炎症が起きることがあります。炎症による腫れや線維化のためその体積が増え、眼窩内の圧力が高くなります。 その結果、眼球が前へ押し出されて「眼球突出」が起こります。甲状腺ホルモンの高さや低さとは関係なく、 バセドウ病がよくコントロールできているのに眼球突出がひどい患者さんや、その逆の患者さんもおられます。
- Q.甲状腺ホルモンが多いとどうなりますか?
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甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身の代謝が過剰になると、動悸、体重減少、手の震えなどの症状が出ます。長期間放置すると、心房細動による脳塞栓症や心不全、骨粗鬆症による病的骨折の原因となり、突然死の原因となることもあります。
- Q.甲状腺機能亢進症とは何ですか?
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甲状腺機能亢進症とは、甲状腺が活発に活動し、血中に甲状腺ホルモンが多く分泌される病気で、バセドウ病(グレーブス病)が最も代表的な疾患です。 原因としては、健常な人には認められない甲状腺を刺激する抗体が血中に存在するため発症します。
- Q.甲状腺疾患があると妊娠・出産は難しいですか?
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甲状腺ホルモンは、胎児や子供の発育、成長になくてはならないホルモンです。 甲状腺機能異常は、流産、早産、妊娠中毒症になりやすいとの報告があり、挙児を希望する場合は妊娠前から、甲状腺機能を正常に保つ必要があります。 治療をきちんと受けながらの妊娠・出産であれば問題ありませんので、診察時にご相談ください。 実際に、甲状腺の治療を受け、その後、元気な赤ちゃんを出産された方はたくさんいらっしゃいます。
- Q.甲状腺が腫れたらどうなりますか?
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慢性甲状腺炎(橋本病)やバセドウ病(グレーブス病)などの自己免疫疾患で甲状腺が腫れることがあります。しかし、見た目が気になること以外で腫れそのものが問題となることは少ないですが、放置はしないほうが良いです。また腫瘍、特に癌などによる腫れでは、甲状腺周囲への浸潤が見られる場合があり、声のかすれなどの原因となることがあります。
- Q.甲状腺ってどこにありますか?
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甲状腺は首の前側、のどぼとけのすぐ下にあります。 蝶が羽を広げたような形で気管を包み込むようにあり、たて4cm、厚さ1cm、重さ15gくらいの小さな臓器です。 正常の甲状腺は柔らかいので、外から手で触ってもわかりませんが、腫れてくると手で触ることができ、首を見ただけで腫れているのがわかります。
- Q.甲状腺の病気にはどんなものがありますか?
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甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌しています。自己免疫疾患などにより、甲状腺ホルモンが低下する病気、甲状腺ホルモンが過剰となる病気があります。また、腫瘍(癌、嚢胞など)も見られることがあります。
- Q.甲状腺機能低下症はどれくらいで治りますか?
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一過性の場合には3ヶ月以内に治ることが多いですが、半年以上続く場合には、永続性と考えられ、生涯服用が必要となります。
- Q.甲状腺機能低下症を放っておくとどうなりますか?
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甲状腺機能低下症とは、血液中の甲状腺ホルモンの作用が低下する病気です。 甲状腺ホルモンが低下すると、全身の新陳代謝が悪くなります。 そのまま放っておくと血中コレステロールが高値となり、動脈硬化を早めてしまう危険もあります。
- Q.副甲状腺の診療もされていますか?
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当院で、副甲状腺に関連する検査等を行っておりますが、腺腫などで手術等が必要な場合には適切な病院にご紹介させていただくこととなります。
- Q.首にしこりがあるように感じ不安です。
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甲状腺は首の前に位置します。そのためしこりが首の前にあるよでしたら甲状腺の腫瘍である可能性が高いと考えられます。甲状腺以外の首の腫瘤などは頭頚部外科の領域となります。
- Q.甲状腺の腫瘍生検検査はできますか?
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当院では、超音波ガイド下で甲状腺穿刺吸引細胞診を行っております。ただし、結果が出るまで約2週間いただいています。
- Q.自分が甲状腺の病気かどうか検査を受けられますか?
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当院では、血球検査、生化学検査のほかに甲状腺に関連した検査を院内で行っており、当日に結果をお伝えすることができます。また、超音波検査により腫瘍が見つかった場合には穿刺吸引細胞診を行うことも可能です。ただし、細胞診の結果は約2週間後となります。
- Q.しんどさやイライラを感じたり、疲れやすいです。甲状腺と関係はありますか?
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甲状腺ホルモンが多い場合には、イライラしやすく疲れやすくなりますが、同時に、頻脈や体重減少を伴うことが多くみられます。そのような症状がある場合には検査を受けることをお勧めします。
- Q.髪が抜けるのですが、甲状腺と関係はありますか?
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頻度は高くありませんが、高度な甲状腺機能低下症では抜け毛が増える場合があります。除外診断として甲状腺機能の検査を行うことがあります。